1. 椿 花咲く南国の 二更を過ぐる星月夜
オリーブの森に焚火は燃えて 歌寮朗らかに酒宴の
感激深き 若き日の 誇りを永遠に忘れじな
2. あゝ南国の沖遠く 黒潮の流れは尽きずして
白金の太陽に溢れては はからずも入る白日夢
生命の旅の寂しさに 蘆生の夢も今しばし
3. 三年の旅の途すがら 山の霊気を憧るる
旅人若く月淡し 熱き情に身もこがす
阿蘇の処女の恋歌に泣け 今宵の宿は湯の村か
4. 冬去り春の訪れば 球磨の流も水暖み
破壊の古城に草もえて ラインの春を思はする
瀬音も高く青春の 幸を讃へて逝くものを
5. 今 蕭条の秋たけて 龍田の丘の小夜曲に
遠きふるさと懐しみ 青き哀傷を恋ふるとき
故郷の方に明星も 黙示の色に冴ゆる哉