ふとした瞬間にフラッシュバックする高校時代の青き所業に「ギャッ!」と悲鳴を上げてしまいたくなる衝動に襲われたりすることが多々あるのです。
世間知らずなのに自尊心が強くて、いつも背伸びしながら過ごしていたあの頃。
おまけに感情の制御装置も未完成で、全ての感情のバロメーターがレッドゾーンに振り切った状態でのガチンコのコミュニケーションをしていたものだからもう振り返るだけでも背筋が凍る恐ろしのジェネレーション。
「あぁタイムリープができればなぁ。」
そんな背徳と慙愧の記憶を懐かしさと好奇心で包み隠し、SNSを糸口にあの頃の年齢分とプラスαの時を経て再び集うようになった僕たち。
近況を報告しあい、よそよそしさもほぐれ、あちらこちらで巻き起こる思い出話にハラハラドキドキしながらも、様々な感情が混濁する空間は、酔いを差し引いたとしても思いがけず僕たちを当時とはまた違った味わい深い関係へと誘ってくれる。
その要因は数多あるのだろうが、一つには語り合ううちに言葉の端々から浮かび上がる、互いに会うことのなかった空白の期間に潜む様々な辛苦を感じとり共感しあえているからなのかもしれない。
あの頃よりも僕たちの心のある部分はタフになっていて、ある部分は弱くなっていている。
そんなそれぞれの情緒の皮膜を重ねあわせ透過してみる事で、可視化できるスペクトルの分布が広がったのかの様に、それまで僕たちを取り巻いていた世界が少し異なった意味や空間を含んで映し出されてたのだろう。いつしかあの「ギャッ!」となっていた思い出も悪く無いものへと変化し、そしてあの頃思い描いていたライフプランとは良くも悪くも違うところに居ながらも、それなりにやってこられているお互いをリアルにリスペクトしあえていた。
変えられない過去があったからこそ、着実に積み上げていくことで超えてきた時空だからこそ生まれるエモーション。
タイムリープ願望と云う憑き物が落ちるのを感じながら、一人時空の歪みを実感していたそんな僕の向かいで、アイツはその夜もあの当時と変わらずのホクホク顔で唐揚げをほおばっていた。
(美術科3期)
文 田頭高利
絵 山崎達也
文 田頭高利
絵 山崎達也