卒業生便り

勘違いが今の原動力

2020年12月15日(火)
大山 竜(港南9期)
 
 自分のこれまでの人生で1番嬉しかった出来事は港南高校に合格できた事です。子供の頃から図画工作が好きだった中学生が、初めて自分で決めた進路でしたから、その喜びは相当なものでした。
 入学して最初の油絵の授業「なんでも良いから自由に描く」というお題でした。ほとんどの学生が初めて使うであろう袖絵具に、まず触れてみる事をテーマにした授業だったと思います。
 当然、自分も油絵具で絵を描くのは初めてで、勝手が分かりません。そこで何故か(自分でも気付いていない未知の才能を先生に見出され、褒められなければならない! )という使命感に駆られ、必死に自分なりの変わった油絵を描きました。絵を描いている最中、背後に自分の絵を見る先生の気配を感じると( 他の生徒より自分の絵を見ていた時間の方が少し長かったから、自分にはオ能があるに違いない! )などと本気で思っていました。「自分にはオ能がある」という勘違いと「誰かに認められ褒められたい」というどちらも少し恥ずかしい不純な気持ちが自分の中に膨大に存在する事を認識させられる出来事となり、40歳を過ぎた今でもこの授業を受けている夢をたまに見て恥ずかしくなります。ですがこの勘違いと承認欲求は今でも自分の原動力となり、多くの作品を生み出す手助けをしてくれています 。
 自分が今制作している物はフィギュアと呼ばれる、大量生産し販売される事を目的とした立体物です。港南高校の授業で学んだ物とは少し違いますが、造形、絵画、日本画、デザインの先生方の印象的な言葉は物作りをする上で、今でも自分を構成する大事な要素となっています。在学中の成績は毎回補修を受けるレベルで、とても褒められる物ではありませんでしたが、今の自分の、粘土で怪獣やアニメのキャラクター達を作る毎日、の原点は港南高校だったと思っています。皆に自分の作った物を見て欲しい!という思いは当時から変わりません。
 中学3年生の自分が、物作りの道に進む事を決意し、その目標を叶えるべく港南高校に進む事を決意した事を今も誇りに思います。やはり自分の人生1番の出来事でした。そしてその道を勧めてくれた母親にも感謝しています。