母校だより

薬学部卒後教育講演会(2019年11月10日)を実施しました

11月10日(日)、薬学部と立命化友会との合同企画として、初めて卒後教育講演会を開催しました。
講演は、京都大学医学部付属病院薬剤部長の松原和夫教授からは「創造と創生・挑戦と持続、そして未来」、引き続き厚生労働省医薬・生活衛生局総務課主査の浜崎紀行先生からは「薬機法等の改正法案と薬剤師への期待」というテーマでのご講演をいただきました。松原先生からは、病院と薬局の連携や国際的な薬事業務の流れ、そして、今後の薬剤師のあり方を具体的な例を示し、御講演して頂きました。浜崎先生からは、現在審議中(先日、無事に国会承認されました)薬機法改正案に関する情報提供と薬剤師教育(モノからヒトへ)を行政的観点からお話し頂きました。今回、卒業生を含めて、70名近くの参加者あり、質疑応答など、大いに盛り上がりました。今回の企画を契機に来年度も年2回を予定して、卒後教育講演会を継続したいと考えています。
 
松原和夫先生 浜崎紀行先生  
白井立命化友会会長 服部薬学部長

保護中: 第19回ソフトボール大会(2019年10月27日)を実施しました

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薬学部 卒後教育講演会を開催します

今回は、薬学部と立命化友会との合同企画として、卒後教育講演会を開催します。
今国会で、審議予定の「薬機法の改正」に伴う厚生労働省の進める方向性と薬学分野に求める将来像を厚生労働省の浜崎先生に御講演頂く予定です。
また、長年、京都大学医学部付属病院薬剤部長を務めてきた松原先生には、今までの研究や今後の薬剤師の役割について、お話しして頂きます。
非常に貴重な講演会になると思われますので、ぜひ、化友会の皆さまにはご参加頂けますよう宜しくお願い致します。尚、薬学部以外の学部・学科をご卒業された化友会の皆様(薬剤師以外の方)にもご参加いただけます。

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「定年退職にあたって」 小島 一男(昭和52年卒)

 1979年10月に母校である本学理工学部助手(化学科)に採用いただき、当時理工学部長をされていた恩師・松田二郎先生の無機化学研究室で歩み始めて以来、39年半勤めさせていただきました。5年制の工業高専を3年で、また大学院博士後期課程を半年で、いずれも中退してきた私は、途中で退職してしまうのではと当初不安でもありましたが、このように定年まで長く勤務できましたことは、生命科学部、理工学部をはじめ立命館学園の皆様にあたたかく見守っていただいたお陰と深く感謝したします。
 当時、衣笠キャンパスの6号館(現在は国際関係学部棟の恒心館)の4階と5階に化学科の研究室がありました。昨年12月の国際関係学部30周年記念行事に参加した折、恒心館内を歩いてみると、何とも懐かしい思いがしました。学部生の時、広小路学舎に出かけて、勾配の急な階段教室の最後列に座って、末川博先生の講演を聞いたことをなぜか思い出しました。
 着任後、京大大学院の分光磁気化学研究室(辻川郁二先生)で行っていた極低温(液体ヘリウム温度)から、松田研の卒業研究で扱っていた高温(1000 ℃程度)までの温度域で、錯体単結晶、溶液、あるいはガラス中のコバルトなどの遷移金属イオンの光吸収を中心に、ESRや磁化率も測定しました。助教授として無機化学研究室を引き継いだころから、当時研究が盛んになり始めていたアップコンバージョン蛍光に興味を持ち、希土類イオンの蛍光材料の研究を始めました。衣笠での院生のY氏は、独自の合成法によりGeO2の無色透明ゲルをゾル・ゲル法により初めて作製し、そこに導入したエルビウムイオンの室温における光吸収やアップコンバージョン蛍光、液体ヘリウム温度でのERSを測りました。それ以来、1994年度に理工学部がBKCに移転して無機分光化学研究室となってからもGeO2系の試料は研究対象であり、ほかにZrO2系、SiO2系、ZnCl2系などについて、形態をバルク、薄膜、あるいは微粒子に制御して蛍光材料の研究を続けてきました。その後、光分野の応用研究として、金微粒子含有TiO2系、WO3系などの光触媒もテーマとし、また液相レーザーアブレーションを用いて最長で炭素原子30個からなるポリイン分子を合成し、性質を調べました。1996年度にSRセンターが開設され、大阪電気通信大学の谷口一雄先生にビームライン2番に分光器を移設いただき、リチウムやホウ素などの軽元素の軟X線吸収を測定してきました。
 
 生命科学部長の時は、学部任期制講師制度、女性教員限定前倒し人事、助教再任基準などについて教授会で決定していただきました。昨年6月には、生命科学部・薬学部10周年記念式典を、両学部主催で薬学部長の服部尚樹先生と共に開催できました。学部長としての提案等につきましては、化友会ニュースや学部の年報に書かせていただきました。ここでは、2017年に9月に行われた研究に関する懇談会での意見を参考までに紹介いたします。それらは、研究力を高めることと授業や行政等についてバランスをとり研究に集中できる環境が必要である/過去の講座制に似たような形で、何人かのグループで共同し、成果を出すようにすれば、研究が進むのではないか/研究は基本、個々人で考えて進めている。それはそれでいいが、共通のミニマムを設定し、頑張ってやらないといけないな、と思わせる仕掛けが必要である/学部全体の議論をすべきで学科の利益だけを考えないことが大切ではないか、等々でした。生命科学部の卒業生や新入生に対しては、読むことと書くことを大事にしてほしいと学部長として伝えてきました。そうすることで、学生のオリジナルな発想が生まれ、成果となって育っていくと思います。
 
 4月からは、特命教授として、SRセンター長と学部授業を担当させていただいています。皆様にSRセンターのご利用をお願いいたします。最後になりますが、立命化友会、生命科学部、薬学部、立命館学園の益々のご発展をお祈り申し上げます。

「定年退職にあたって」 木村 富紀(2007年4月着任)

 定年退職にあたって、立命化友会より所感をまとめる機会を頂いたので、研究、学部の運営、教育の三点から、在職期間を振り返ってみたいと思う。

 私の研究歴は、1981年4月の大学院入学に遡る。
 大学院時代は、British Council給費留学生として留学したOxford大学Sir William Dunn School Pathologyにおける研究を含め、脳炎を引き起こすFlavivirusを用いて、宿主細胞へのウイルスの感染侵入メカニズムの解析を行った。学位取得後は、博士研究員として採用された英国Medical Research CouncilのLaboratory of Molecular Biologyにおいて、ヒト免疫不全ウイルスI型 (HIV-1)がコードするウイルス増殖調節遺伝子であるrevの作用メカニズム解析にあたった。その後の研究から、本遺伝子産物はSplicingを免れイントロンを残すウイルスゲノムRNAの核外輸送を調節することが明らかとなり、帰国後は様々な細胞由来RNAの核外輸送機構に関わる研究を進めた。
 2007年4月に立命館大学への異動が決まった際に先ず考えたことは、今後立ち上げる新研究室で行う研究主題についてであった。90年代半ばにHIV-1 rev遺伝子の機能解明から花開いたRNA核外輸送研究は、その後世界レベルで急速に研究が進み、2007年当時には概に新規な知見は出尽くした感が強かった。そこで、これまでのRNA研究で培ってきた知見と技術を、博士研究員時代から強い興味を抱いてきた遺伝子発現制御研究に応用する事にし、ヒトゲノム研究の結果その存在が明らかにされたタンパク質をコードしないRNA(非コード性RNA)を新任地での研究主題に据えることにした。幸いなことに、非コード性RNA研究は、前任校時代からの共同研究者で私と同時に生命科学部に異動してきた西澤 幹雄教授が先鞭を付けていたことから、彼を主任とするRGIROプロジェクトに選定されることになった。このプロジェクト選定のおかげもあって新研究室における研究は順調に実を結び、抗ウイルス性自然免疫応答を制御するI型インターフェロンの発現制御には、この非コード性RNAである内在性アンチセンスRNAが転写後性に関わること、その作用メカニズムには、対応するmRNAの直接的安定性制御に加え、microRNAを吸着抑制することによるCompeting endogenous RNA効果が関わることを明らかにできた。最終的には、この内在性アンチセンスRNAの機能ドメイン配列から作製した短鎖のRNAオリゴヌクレオチドを用いて、感染動物体内における抗ウイルス性自然免疫応答制御効果を再現することに成功し、新規核酸医薬開発のためのシード化合物として特許を成立させるとともに、大学院博士課程学生の学位論文とすることができたのは幸いであった。この非コード性RNA研究は、その後がん遺伝子の発現制御研究へと発展し、乳がんの悪性転化に関わるキナーゼ分子の発現制御を可能にする内在性アンチセンスRNAの発見とその制御メカニズムの解明につながった。

 学部運営に関しては、今村学部長(当時)に指名された国際・企画担当副学部長時代(2015-17)に関わった仕事を特記したい。2015年4月に追加設置した創薬科学科の卒業生が進学する大学院修士課程として、薬学研究科薬科学専攻修士課程の設置認可申請を担当した。当初、第1期生が卒業する2019年春の設置認可を目指したが、学内諸事情により認可申請が遅れ、これは叶わなかった。しかしながら、在職中の本年3月に無事申請を済ませる事はできたので、副学部長就任にあたり今村学部長(当時)から依頼された課題に対し最低限の責任は果たせたと安堵している。
 本課程は、人材育成目的として、「医薬品の創製を中心とする学際的な薬学の専門知識と研究力を備える人材の育成」を謳い、「英語での基本的なコミュニケーション力を有し、国際的に活躍できる」ようにする教育目標を掲げた。そのため、カリキュラムポリシーには、「英語でのコミュニケーションやプレゼンテーションなどアクティブラーニング型の教育を行う科目」を設定し、これに資する目的で、本学薬学部とトロント大学Leslie Dan School of Pharmacyとの間で大学院学生並びに教員の相互交流のための協定を結んだ(本年6月締結)。この8月には、創薬科学科第1期卒業生を含む本学学生2名がLeslie Dan School of Pharmacyに研究留学に出向いており、今後の両大学薬学部並びに大学院薬学研究科間の相互の教育、研究交流に基づく発展が大いに期待される。
 
    本稿を閉じるにあたり、最後に私が主催した薬学部 病原微生物学研究室における卒業研究について触れたい。
 研究室開設初期の理工学部応用化学科/生物工学科並びに生命科学部の学生諸君に引き続き、多くの薬学部学生諸君が薬学/生命科学の基礎を学んでくれた。薬学部は、卒業後の薬剤師資格取得を前提とするため、これらの卒業生の殆ど全ては薬剤師資格取得後臨床分野に進んだ。しかし、私自身が卒業後の進路として基礎医学研究を選択したこともあり、薬学部卒業生の中からアカデミア志望学生が現れるのを密かに期待していた。この淡い期待は、創薬科学科出身の卒研生が、将来の研究者を目指し大学院に進学した本年4月に叶えられることとなった。この学生君の今後の精進に期待をし、見守りたい。

 2007年4月に本学に着任し、一生懸命駆け抜けた12年間であった。新研究室開設にあたって自分に課した教育、研究、運営の諸目標は、道半ばで終わったものも多々あったが、立命館大学薬学部と薬学研究科の将来の発展のための種まきはできたのではと自負している。今後は、薬学部特任教授として、これらの種がどのように芽吹き、育っていくかを見守って行きたい。 

追記
 申請中の薬学研究科薬科学専攻修士課程は、8月30日付で文部科学省より2020年4月1日からの設置が許可された。

薬学部の近況報告 薬学部長 服部 尚樹(平成21年着任)

 立命館大学薬学部は、今年、生命科学部と共に創設11年目を迎えました。立命化友会、病院薬剤師会、薬剤師会の皆様方には、日頃からさまざまな分野でご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
 病院や薬局で活躍し、地域社会の医療の担い手になれる薬剤師の育成を目指す6年制の薬学科が設置されたのは2008年、これまでに6期生までで589人の卒業生を輩出致しました。今年は、病院、薬局、企業への就職の他、国家公務員総合職(厚生労働省)をはじめ6人が公務員に、6人が大学院博士過程に進学し、チャレンジ精神に満ちた人材が育っていると感じました。薬学部の教員には、大学の通常の教育と研究に加え、薬剤師国家試験に学生を合格させるという使命があります。更に実務実習の際の薬局・病院訪問など他学部にはない苦労がありますが、薬学部の教職員は日々奮闘しております。今年2月に実施された第104回薬剤師国家試験は私立薬科大学57校中11位で、昨年より順位を3位上げました。しかしながら、国公私立のほぼすべての薬学生が受験した薬剤師国家試験直前の大手予備校の模擬試験で全国2位だっただけに、少し残念な結果でした。海外での薬剤師の働き方、海外のhealthcare システムを学ぶために立ち上げたカナダのトロント大学薬学部への留学プログラムも3年目を迎え、国際社会で活躍出来る英語教育を展開しております。カナダの薬剤師は調剤をせず、薬の効果、副作用のチェックと患者への服薬指導が主な業務になっています。AIの時代を迎え、日本の薬剤師の仕事も同じ方向に進むことが予想され、患者を中心にした薬物治療に積極的に参画できる人材の育成に務めて参ります。
 高度の知識と技能、問題発見・解決能力を持ち、最先端の創薬研究を遂行出来る人材の育成を目指す4年制の創薬科学科は2015年に開設されました。今年始めて33人の卒業生を輩出し、その内、約80%が大学院に進学しました。改めて非常に研究マインドの高い学生が集まっていることを実感致しました。学部卒の学生も、日本新薬、久光製薬、全日空など大手企業に就職していきました。海外での研究を体験し、研究への更なるモチベーションを高めるため立ち上げた、アメリカのYale大学、カナダのToronto大学への留学プログラムに参加する学生も出てきました。今後ますます研究の高度化に務めて参ります。
 私の臨床薬理学研究室からは、これまでの6年間で30人の学生が社会に巣立っていきました。先日、彼らが研究室のOB•OG会を開いてくれました。写真はその時のもので、多くの卒業生が全国から集まってくれました。病院、薬局、製薬企業、CROなどの治験会社、県庁、通産省、コンサルティング会社など、いろんな職場でみんな元気に頑張っている姿を見てとても嬉しかったです。これからも卒業後、「立命館で学んで良かった」と思ってくれる卒業生を一人でも多く輩出する様、頑張りたいと思っております。

生命科学部の近況報告 生命科学部長 菊地武司(平成16年着任)

 生命科学部長・生命科学研究科長の菊地武司です。今年度四月より、小島一男先生の後任として学部長を拝命しております。立命化友会の皆様には平素より生命科学部・生命科学研究科の研究教育にご支援・ご協力を賜り誠にありがとうございます。
 立命館大学では、立命ファミリーの輪を広げまた強固にするために、かつて父母教育後援会の一企画で「都道府県懇談会」といっていたものを「一日キャンパス」に名称を変え、さらにアカデミック講演会というような企画も加え、単にそれぞれの地域に赴いて、父母の方々のお話をお聞きするだけでなく、立命ファミリーとして日頃の研究・教育に触れていただき、また卒業後も立命館に関わるというように校友会活動を広げようとしております。
 皆さんご承知のとおり本学では、現在R2020の完成期を迎え、さらにそれを発展させるべくR2030に取り組んでおります。R2020ではグローバリゼーション(国際化)とダイバーシティ(多様性)をキーワードとして、留学生の受け入れ、海外への学生の派遣、さらにはダイバーシティの一つの指標でもある女性教員の積極的任用を生命科学部でも行っております。英語基準の大学院留学生数も増加し、それぞれのコースの研究室に留学生が日本人とともに研究に励んでいる姿もそんなに珍しいことではなくなってきました。日本人院生にとっても大きな刺激になっていると思います。R2030に向けさらに留学生の受け入れを進める所存でございます。また日本人学生の海外派遣も力を入れており、カリフォルニア大学デービス校への学部学生の派遣、GRGP(Global-ready Graduate Program) 制度を利用した大学院生の海外への大学・研究機関へ留学する院生の数も少しずつ増えているように見受けられます。
 2020年度以降18歳年齢人口の減少が予想され、大学もそれに備え様々な方策を検討せねばなりません。生命科学部も例外ではなく、これまでと同じ入試施策を続けるわけには参りません。今後は、新たな入試施策に挑戦し、さらにはこれからの激動の時代を乗り切るための学部の在り方についても斬新な試みが必要となります。さらに2020年度より順次小中高教育の学習指導要領が大きく変わることが決定しており、今後は探求型授業を取り入れた教育がなされるということです。数年後にはそのような教育を受けた学生が大学に入学することになります。そのときには、それまで小中高校にて受けてきた先進的な教育に比べ、大学では旧態依然とした教育を行っていれば、受験生から愛想をつかれるのは間違いありません。これからの大学教育のあり方を我々は追及せねばなりません。
 また昨今注目を受けているのはいわゆるSTEAM教育です。これは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の総合的教育環境のことです。このように幅広い教育ということも大学に求められており、我々も新たな大学教育を模索せねばなりません。現在は様々な領域において変革を求められており、大学も、従って立命館大学生命科学部も例外ではありません。今は変革の時です。
 さて、今年は、立命館大学校友会は設立100周年目にあたります。改めまして立命館大学、そして校友会の伝統の深さを認識いたします。今年10月には記念の企画がいろいろ計画されており、特に理工系学部では記念講演会を企画しております。講演者は宇宙科学研究所所長の國中均氏で、はやぶさ計画についてご講演いただけることになっております。この企画についても皆様方のご支援を賜ればと存じます。
 これからの生命科学部・生命科学研究科のさらなる発展を追求していく所存でございます。皆様の一層のご支援・ご援助をよろしくお願い申し上げます。

「定年退職にあたって」 岡野 友信(平成22年着任)

 私が立命館大学薬学部に着任したのは2010年4月でした。当時薬学部の1期生はまだ3回生で、実務家教員としての私の役目は、彼らに実務前実習を受けさせて、実務実習に行くための必須のライセンスであるCBT(知識を評価する客観的試験)やOSCE(技能・態度を評価する客観的試験)に合格してもらうということでした。そして実務実習をさせるための病院や薬局に彼らを行かせなければなりません。しかし実務前実習については誰がどこで何を教えるのかが何も決まっておりませんでしたし、また彼らの実習先の確保さえできておりませんでした。まず臨床経験のあるベテランの薬剤師を探してきて嘱託講師として採用し、実習を教えてもらうことにしました。「餅は餅屋」とはよく言ったもので、これはかなりの効果を上げることになりました。以前、臨床とは全く関係のない先生が一夜漬けで覚えた調剤を学生に教えているといった話を聞いたことがありますが、そのようなことはこれから実臨床で実習する学生あるいは就職する学生にとってあまり勧められる話ではないと思います。学生に不利益をもたらすだけでなく、その道で業績を上げておられる先生方にとっても、このような煩わしいことに時間を取られていると「科学の進歩が1日遅れる」と私は考えます。さらに嘱託講師には、OSCEの評価者や、実習先への訪問指導もしてもらうこととしました。嘱託講師にとっても自分達の教えたことが、学生をちゃんとOSCEに合格させるのに役立っているのか、あるいは臨床現場で通用するのかの確認にもなるだけではなく、実務家教員以外の先生方の施設訪問の負担を著しく軽減し(学生1人につき3回訪問)、まさに一石三鳥でありました。またサイエンスコアに南棟を増築してもらうことにより、細やかな実務前実習が可能となり、OSCEの際の動線確保も可能となりました。
 薬剤師国家試験合格率についての課題はたくさん残されていますが最悪というほどでもありません。しかし合格率が突出してよくないと、授業料の高い当薬学部は、優秀な学生を他大学に取られてしまい、そうするとまた合格率が下がるという悪循環になる可能性があります。卒業後の進路ですが、病院や企業に知り合いがたくさんいるので、学生を就職させるのには自信がありました。薬学部創設時は、薬学出身の先生が少なかったこともあって多くの学生が進路相談で私のところに来ました。1期生から6期生までで約80人分の病院採用の推薦状を書きました。もちろん一人につき1通ではなく複数の推薦状を書いてあげた学生もおりました。今もほとんどの卒業生の就職先を把握しており、転職した学生や結婚した学生についてもできるだけ記録を塗り替えるようにしております。 
 無事定年を迎えることができたのは先生方や事務の方々の温かいご支援があったからであると感謝しております。今年4月からは特任教授として立命館大学で仕事を続けさせていただけることになりました。教授会・研究科会議には出なくてよくなりましたが、授業が前期・後期1科目ずつ、実習は前期2日、後期3日そして学生の実習先への訪問指導19人と現役の時とあまり変わらず、また実務実習委員会、OSCE委員会やキャリアと行う就職に関する会議にもオブザーバーとして参加させていただいております。実習のマニュアルに記載されている緊急連絡先が、今年度も私のメールアドレスになっているため、4月以降に起こった実習中のトラブルにも前年度同様毎回対応しております。嘱託講師の任用期間は5年ですので、新しい嘱託講師を見つけてくるのも私の仕事になっております。これからも立命館大学のためにお役に立てるならなんでも喜んでやりたいと思っておりますが、案外皆様の邪魔をしているだけかもしれません。そんなとき親切な忠告をして下さる方がおられたらその方に感謝し、素直に引退いたしますのでよろしくお願いいたします。