2016年
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2016年11月25日
関西武夫原会28年秋のハイキング 嵐山嵯峨野歩きの記
第14回卒(S41年卒) 矢 野 大 輔
11月20日(日) 今日は楽しみに待っていた武夫原会、秋のハイキングの日だ。朝起きてみるとガスがひどい。JR線では若干の遅れが出ている模様。京都に住んでいる幹事に電話して京都の様子を聞いてみると、京都方面はガスもなくいいお天気だという。よし、今日のハイキングは予定通り実行だ。
多少早目に家を出て、嵐山の駅前のコンビニで用意してきた資料をコピーする。この時間でもすでに嵐山駅前はラッシュアワーの通勤電車以上の混みようだ。おそらく、ほとんど紅葉狩りの行楽客だろう。ほどなく岡本事務局長が到着。赤く染め抜いた「熊本大学」の小旗を目印に掲揚する。予定通りの時間10時に参加者全員が集合する。今回は熊本信愛女学院同窓会のレディ3名が参加して、男子5名女子7名の全12名の顔ぶれとなった。
嵐山駅前から電車を降りた行楽客のほとんどが、渡月橋に続く河原の方に向かう中、我々は少し横にそれた旧道を行き、虚空蔵法輪寺(こくぞうほうりんじ)に立ち寄る。法輪寺は清少納言の「枕草子」では当時の京都を代表する寺院として登場しているという。ここにはこれから行く嵯峨野一帯が見渡せる舞台があるほか、十三参りや電電宮などの行事や史跡がある特色のある寺院だ。ちなみに「渡月橋」は、初め「法輪寺橋」と呼んでいたものを橋を渡る月の姿を見て、亀山天皇が渡月橋と呼んだことに由来するという。真っ赤に色づいたモミジの下に続く法輪寺の通用門を出て渡月橋を渡ると一番初めにあるのが天龍寺だ。天龍寺は京都五山第一の禅寺の本山、後醍醐天皇の霊を弔うために足利尊氏が建立したもの。大門を入り本堂までの前庭を巡るだけで両脇に立ち並ぶモミジの木立に圧倒される。さらに内庭に入れば見事な池や庭園が見られるがここは省略。すぐ北の竹林を歩くことにする。なんとこんな狭い竹林の中でも、京都名物の「人力車」が走っている。
というより人群れをかき分けゆっくりと進んでいる。「人力車」はブレーキがなく、走っている途中で止める時は足で突っ張って止めなければならず、大変な労力を要するという。竹林の中では混雑の中で走ることもできず、かえって楽かもしれない。
嵯峨野には多くの古刹がある。野宮(ののみや)神社、落柿舎、常寂光寺、二尊院、祇王寺などなど。落柿舎は蕉門の一人、向井去来が結んだ庵である。野の田園の中に佇む寂庵といった趣。庭にはたわわに実をつけた柿の木がある。つい、あの木の下で口を開けて実が落ちてくるのを待っている去来の姿など想像してしまう。マンガくらいにはなるかも?定家が小倉百人一首を編んだといわれる時雨亭は常寂光寺の中にある。その昔はこのあたりも小倉山の一帯だったのか?我々のモミジを訪ねての嵯峨野巡りの最後は祇王寺だ。祇王寺ばかりは大枚コイン3個払って拝観させていただくことにする。この庭では精一杯光を浴びるように高くそびえる樹木には目をやらず、緑の苔とその上に散りしかれたモミジの落ち葉をめでるのが正しい見方だという。この庭は、あくまでも静かなたたずまい、あまり色も濃からずのモミジ葉。嵯峨野で今まで見てきた紅葉とは全く異なる趣の庭園だ。さすがに、祇王寺は本島会長が強く推奨した庭園ではある。
このあたりまで来ると、見事なモミジの数々で忘れかけていたお腹の虫が少し泣いているのに気がついてきたようだ。時計を見ると、もうお昼はだいぶ前に過ぎている。これから前に歩いた竹林の裏を通って昼食場所と決めている亀山公園に向かうことにする。
亀山公園は、今まで歩いて来た嵯峨野の喧騒はどこに行ったかと思えるほど、人の姿も少ない広々とした公園だ。ここでなら、一杯入った熊本健児の「武夫原頭」の音頭も思いっきり大きな声で唱和できるだろう。不思議なことに、ここでは今まで奥ゆかしくモミジやコケなど愛でていた淑女紳士はどこに行ったやら、むかしのガキどもの話、不味かった脱脂粉乳ミルクの思い出、はてはいつまでも独り立ちしようとしない親不幸息子の話など、過去と現実が行ったり来たりのはなしとなる。ここは阪急嵐山駅もすぐ近くとあって、ゆっくりと、のんびりと出来るいい場所だ。
さて、われらの次回のハイキングはどこにするか、一応春は桜、秋は紅葉の観賞に落ち着いているが、その他、あまり歩かずゆっくりと出来る場所だったら桜や紅葉に限ることはないでしょう。皆さんの提案をお待ちしています。
おっと、今回のハイキングで秀逸のポイントを書きおとしていましたよ。最終昼食休憩の後、今日歩き始めの渡月橋に向かうべく亀山公園から南の大堰川(おおいがわ)方面に向かう途上、実に見事なモミジに遭遇したのです。この日嵯峨野周辺で見た主として真っ赤な紅葉を中心としたモミジ群とはまるで違うモミジ、黄色から橙色、さらに朱色とカラフルなモミジ群が何重にも重なって目の前に現れたのです。帰路を急ぐ行楽客のだれ一人として足を止めない人はいません。そしてこのカラフルなモミジ群の下をくぐって少し足を進めると、今度は大堰川にはボートの数々がゆったりと漂っている。これはもう何とも言えない不思議な光景でしたね。今日のハイキングに参加した皆さんには、きっと心の中に大きな錦絵となって残されたことと思います。