旧師・同窓生のご活躍

児童文学作家になりたくて

2018年06月01日(金)
手嶋ひろ美 (手嶋洋美 平12大児卒)

 大学生活で思い出に残ることといえば、何といっても児童文学科での制作の授業です。作家になりたくて梅花に入った私は、毎回楽しみにしていました。
 制作の授業では、物語を書く技術を学び、作品を書いて先生に批評してもらいます。現役作家でいらした先生は、「作家は自分の中にある熱い思いを作品に書かなくてはならない」と、よくおっしゃいました。けれど当時、作品にしたいというほどの「熱い思い」が乏しかった私は、原稿を書くのに四苦八苦。書きたいことを見つけるのに苦労しました。学年が上がるにつれて先生の批評は厳しくなりましたが、おかげでずいぶん鍛えられたと思います。当時叩き込まれた作家としての心構えや創作の基礎、そして「熱い思いを書く」という指針が今、作家としての私を支えてくれています。また、児童文学科の必修科目で、古今東西の様々な作品に触れたことも視野を広げる助けとなり、4年間どっぷりと児童文学に浸った経験は、大きな財産になりました。
 4年生のとき、脳性まひで手足が不自由な自分の経験を元にゼミで書いた作品が、第16回ニッサン童話と絵本のグランプリ童話部門最優秀賞をとり、受賞作『くつが鳴る』が出版されました。卒業後は、児童文学作家として同人誌で創作するかたわら、梅花高校の人権授業で十数年にわたって講演。毎日新聞での連載をきっかけに、新聞社主催の講演や、市の福祉講演会に招かれたりもしました。創作でも講演でも共通している思いは、「私の話を通して、体が不自由な人の気持ちを多くの人に知ってもらいたい」ということです。最新刊『笑われたくない!』(文研出版)にも、その思いを込めました。
 児童文学科の名前がなくなってしまったのは本当に残念でなりませんが、多くの学科卒業生が同じプロの作家として活躍していることは心強いです。私も学科で学んだことを活かし、書き続けていきたいと思います。

~夢の途中~

2018年05月31日(木)
井上林子 (平12大児卒)
 大学時代、私は児童文学科の畠山兆子先生の「近代日本児童文学」ゼミで、宮沢賢治や豊島与志雄、現代の児童文学作家の研究をしていました。他に「絵本制作」や、「外国児童文学」の研究、一般教養でも「歴史」や「映画論」など、興味ある授業はなんでも受け、好きなだけ児童書を読むという、なんとも賛沢で豊かな日々を送っていました。私は児童書が大好きなので、児童文学科の勉強は本当に心から楽しく嬉しいものでした。
 また、在学中は絵本研究会「こうめ文庫」に所属し、梅花幼稚園の子どもたちと一緒に絵本をよみあってきました。そこでは、座学だけでは得られない、絵本に対する子どもたちの本物の反応を知ることができ、私自身の絵本観を育ててもらいました。今も「子どもが心から好きになる絵本、求める物語とはどういうものなのか?」を探りながら、子どもたちから様々なことを学ばせてもらっています。
 現在私は、児童文学作家をやりながら、梅花幼稚園未就園児教室・絵本クラスの先生と、絵本クラブ「こうめ文庫」のスタッフを引き続き楽しくやらせてもらっています。
 大好きな児童文学を仕事にでき、さらに、かわいい子どもたちのためになる仕事もできる今の状況を、とても幸せに感じております。
 私だけでなく、児童文学科の先輩方や、同期の友だち、後輩たちも、みなさん自身の夢を叶え活躍されています。作家、画家、翻訳家、編集者、研究者、教育者、書店員、図書館司書、保育士、小学校教諭、子ども関係の仕事、絵本にくわしい素敵なお母さん・・・・・・。それ以外の仕事でも、大学で学んだことを糧に、みなさん、未来を生きる子どもたちへとつながる仕事を日々頑張っています。これは、とても尊くすばらしいことだと思います。
 梅花の卒業生は、夢を叶え続けています。
 みんなも、私も。
 これからも、ずっと――。