3月の会誌発行に向けて、現在 編集理事、委員が大奮闘で最後の追い込みにかかっています。
今年度は第50号記念号で例年にも増して興味深い記事を満載してお届けしたいと頑張っています。楽しみにお待ち下さい。
大阪府立大学は昔から地味な校風で、素晴らしい研究、学び、地域貢献、産学連携事業、国際交流などの実績があるにもかかわらず外に発信されることが少なかったように思います。今年の会誌では『府大って素晴らしい』と言う記事で頑張っている府大の様子を掲載しています。
その一部を予告編を兼ねてホームページで先行してお届けします。
(以上)
会誌50号「府大って素晴らしい」記事
1.人材育成とビジネスモデル構築を目指す府大植物工場
「気象変動、自然災害の影響を受けにくい」、「エネルギー、淡水及び土地の利用効率が高い」、「環境保全」、「高層化」及び「地産地消が可能」などから、今、日本では植物工場のプラント技術が大きく発展しようとしています。
一方日本は、水資源が豊富で、世界最先端の建築技術、プラント技術を保有し、しかも今後、再生可能エネルギー技術も大きく進化を遂げようとしており、植物工場にとって世界に類のない好立地条件があります。
植物工場は、近い将来訪れようとしている世界的な食糧難を解決する重要な鍵を握っており、今や日本の技術は世界トップクラスであり、世界中から高い評価を得ています。
ただ、「安易な技術の切り売りによって、半導体や液晶テレビ市場のように、技術立国日本が犯してきた数々の失敗の二の舞にしてはならない、ということも一方で強く指摘されています。その為に生産する品種と作り方、売り方までをセットにし、バリューチェーンを完成させ、日本のシステムを世界共通の規格仕様にして、そのシステムごと国内のみならず世界に普及を目指さなければなりません。」(上記カッコ内は建設通信新聞150525朝刊9面から引用)
府大の植物工場の実用化と普及は、『地球規模での環境問題が人類の存亡にも関わる喫緊の課題となる中で、食料の安全・安心のある安定した供給とともに、我が国の経済成長戦略や地域創生の一環となる新産業の創出など、現代社会が抱かえる諸課題の解決に向けた国家戦略の一つ』として、植物工場研究センターの企業コンソーシアムの研究者・技術者が共に力を合わせて進められています。
最新鋭の技術、機材を取り入れるとともに、
- ◆教育戦略として『植物工場分野での中核的専門人材養成』
- ◆ビジネス戦略として『産官学連携によるビジネスモデルの構築』
を持って活動を展開しています。
(参照URL:
http://www.plant-factory.osakafu-u.ac.jp/)
国内で厳しい競争にさらされながら、長年蓄積してきた研究成果と府大の豊富な人材を活用し、独自の戦略で展開する府大植物工場研究センターの今後の活躍を是非とも見守っていきたいものです。
2.ベンチャー設立支援で初成果:1月
大阪府立大学が2012年から堺市と取り組んできた地元中小企業の新規事業創出支援で、プロジェクト開始以来初めて社内ベンチャーが発足する。設立資金は大阪信用金庫のファンドから拠出される見通し。同ファンドは地域の創業者の円滑な資金調達支援を目的としており、IPO(新規株式公開)を前提とせずに融資が受けられる。社内ベンチャーを立ち上げるのは、テクノタイヨー(堺市東区、水野敏雄社長、072・255・9559)。金属加工や精密機械の組み立て加工などを基盤事業としている。
【以上、日刊工業新聞BusinessLineより抜粋:2015/1/19】
3.“資源循環型バイオガス発電”システムの構築を支援:3月
鈴与商事株式会社は、有機系廃棄物を有効活用したバイオガス発電と発酵および発電過程で生じる副産物を更に利活用する“資源循環型バイオガス発電”システムの構築に向け、静岡県菊川市にてバイオガス発電プラントの建設に着手しました。
弊社では予てより、廃棄物減容、エネルギー利用、ゼロエミッションの観点から、 食品製造業を営むエスエスケイフーズ株式会社(本社:静岡市葵区栄町1-3/代表取 締役社長:鈴木健一郎)と農業生産法人ベルファーム株式会社(本社:菊川市西方42 00/代表取締役社長:阿部齊/以下、ベルファーム)(いずれも鈴与グループ)の製 造・生産過程で排出される有機系廃棄物の有効利用の検討を重ねており、今般、静岡県、 菊川市および地元自治会組織とも連携し、菊川市に所在するベルファームの隣接地に 資源循環型バイオガス発電システムを構築する目処が立ち、バイオガスプラントの構築 に着手しました。
本システムは、カーボンニュートラルな有機系廃棄物を原料として、メタン発酵し、 発電により生じる電力、燃焼熱、排気ガスおよび消化液の4つの資源を最大限有効活用するものです。
【鈴与商事NewsRelease(2015/3/30)より抜粋
http://xtw.me/XaEQAjE】
この一連の計画には、本学大学院工学研究科の安田昌弘准教授が技術支援として関わっている。安田准教授と株式会社公害防止機器研究所が技術支援を行い、バイオガス燃焼後の排気ガスから NOx を除去し、CO2を精製するシステムを構築する。
4.ミドリムシオイル、バイオディーゼル(BDF)燃料改良:4月
大阪府大の中沢昌美助教らの研究チームは、葉緑体を持つミドリムシ(ユーグレナ)が光合成で作り出す燃料の質を高める技術を開発しました。
ミドリムシから作る従来の燃料は炭素の数が平均14個で、21℃で固まり始めます。炭素数が少ないほど低温で固まりにくいことが知られています。このためディーゼル燃料に混ぜる割合が1%~5%程度にとどまっていました。研究チームは燃料を作るのにかかわる酵素の働きを詳細に分析し、炭素数を増やす働きを持つ酵素「KATI」を突き止め、この遺伝子の働きを抑える試薬を与えてミドリムシを培養すると、炭素数が12個や13個の燃料が得られ、13℃まで固まらなかった。
中沢助教は、これによって、ディーゼル燃料混合比が飛躍的に高まるとし、簡単な培養技術を開発する方針。ミドリムシは光合成を通じて「ワックスエステル」という燃料を細胞内にため込みます。
エステルの乾燥重量は最大で自重の30%にのぼる。このため生産効率を高めて石油の代わりにしようという研究開発が盛んになっています。【日経産業新聞2015/4/13朝刊より引用】
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ミドリムシオイルについては、以下㈱ユーグレナのHPの記事を参照ください
[ジェット燃料に適したミドリムシオイルの成分]
飛行機の燃料であるジェット燃料には、軽油のように軽質な燃料が必要で、その軽油よりもっと軽質な灯油が利用されています。ミドリムシは、抽出・精製されるオイルが軽質であるため、他の植物微細藻類に比べてもジェット燃料に適しています。
[高い生産性と食料との非競合]
ミドリムシの培養には専用設備を利用するため培養場所が農地である必要がありません。
ミドリムシは体長わずか約0.05mmという小さな微生物(藻の一種)です。髪の毛の太さがおよそ0.07mmなので、それよりも小さいことになります。その姿をはっきり見るためには顕微鏡で見るしかありません。しかしこの小さな体には、無限の可能性が秘められているのです。
(㈱ユーグレナHPより:
http://www.euglena.jp/labo/)
サトウキビやトウモロコシといったバイオ燃料と違い、食料生産の土地と競合する心配がないため、本来食料にすべきものを燃料にするようなことがなく、食料価格の乱高下を防ぎ、適正価格化に貢献します。また、現在バイオ燃料候補として挙げられている植物よりも敷地面積当たりの油脂生産性が高いことも特徴です。ユーグレナ社東京大学内ラボでの実験では、油ヤシの実に比べ15倍以上の生産が可能ということが分かっています。
[循環型燃料]
石油は地中から掘り出されて燃やされ、元々地中に固定化されていた二酸化炭素を空気中に増加させます。一方、二酸化炭素を吸収して光合成で育ったミドリムシから製造した燃料は、燃やして二酸化炭素を出しても結果的に空気中の二酸化炭素は増加しません。すなわち循環型の燃料と言えます。よって、石油由来ではなくミドリムシ由来のバイオジェット燃料を利用することで、温暖化の一因といわれる二酸化炭素を空気中に増加させることなく、今までと同じように飛行機を飛ばすことができるようになります。
【以上、文面、写真とも
㈱ユーグレナHP
(
http://www.euglena.jp/solution/energy.html)
より引用】
5.モーターの電磁損失分析・測定評価装置を大阪府大に設置:4月
NEDOと高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)は13日、モーターの電磁損失を正確に分析・測定できる評価装置を開発したと発表した。大阪府立大学(堺市中区)のモーター・磁性材料技術開発センターに設置する。
新規磁性材料を用いた次世代型自動車や産業機器向けの高効率モーターの評価分析に活用する。分析装置の軸受部分を磁気軸受とすることでモーターの回転部分が非接触になり、摩擦損失をほぼ0に抑えられる。
設計に必要なエネルギー損失の数値を高精度に計測することができるという。
両研究機関は2022年にモーターのエネルギー損失について25%削減することを目標としている。今回の分析評価装置は、設計に向けた要素技術として活用が期待される。
【以上、日刊工業新聞WEB記事(2015/4/44)より抜粋:
http://xtw.me/XKuF136】
【技術概要参考資料:
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100377.html】
6.水素エネ普及へ連携:6月
大阪府大や堺市は2日、燃料電池車に使う水素エネルギーの普及を目指す産学官の連携組織「堺市水素エネルギー社会推進協議会」を設立した。
関西電力や大阪ガス、岩谷産業など民間企業17社や近畿経済産業局が参加。普及に向けた課題を解消し、民間による燃料電池車の販売促進や、水素ステーションの増設につなげる。
年内にも消費者向けの燃料電池車の試乗会を開くほか、早期に堺市内に2ケ所程度の水素ステーションを設置して、実証実験に取り組む。設立総会に参加した企業などから「現状では水素の使い道が限られており、生産能力が余っている」(新日鉄住金)、「関西の水素ステーションは関東より少ないのでもっと整備したい」(近畿経産局)といった意見が出た。
協議会は初年度、3カ月に1回のペースで会合を開き、水素エネルギー活用に向けた課題を整理する。座長には松岡雅也・大阪府大大学院教授を選出した。堺市周辺には新日鉄住金や三井化学、エア・ウォーターなど水素を扱う製造業が多く立地する。市は水素ステーションの採算性は高いとみており、「水素の供給源として臨海部のコンビナートを活用し、関連産業の誘致や雇用拡大につなげたい」(竹山修身市長)という。今後、国家戦略特区として、水素タンクなどの規制緩和を関西広域連合と連名で要望する方針。
燃料電池車は昨年12月にトヨタ自動車が世界で初めて発売。トラックやバスにも普及する公算が大きい。水素は輸送や貯蔵が可能で、送電線による電気供給の補完やバッテリーに代わる機能が見込める。国は大都市圏を中心に水素ステーションの整備を支援している。
【以下、日本経済新聞2015/6/3朝刊より引用】
7.ミドリムシでストレス疾患抑制:7月
大阪府大の中野長久客員教授らと㈱ユーグレナは、光合成する微生物ミドリムシ由来の食物繊維「パラミクロン」がストレス性の疾患に効くことを動物性実験で確かめた。パラミクロンを与えたラットは胃潰瘍の症状が和らいだ。㈱ユーグレナは武田薬品工業とパラミクロンの開発で契約を結んでおり、今後の医薬品などへの応用を視野に入れて研究を続ける。研究チームはラットに2週間、パラミクロンをエサに混ぜて与え続けた。その後に18時間、水に浸して強いストレスを与え、胃潰瘍を発症させた。
パラミクロンを与えたラットでは、通常食のラットに比べて胃潰瘍の面積が半分以下だった。パラミクロンは小腸の免疫に作用して、ストレスによるホルモンの乱れを是正し胃で起こる炎症を抑えるという。
中野客員教授によると、ストレスによるホルモンの乱れや炎症は生活習慣病全般に関わる。パラミクロンはがんや糖尿病、肝硬変のほか、精神疾患にも効果がある可能性があるという。
【以上、日経産業新聞2015/7/21朝刊より引用】
8.Ni基の超々合金を開発:11月
大阪府立大学工学研究科の金野泰幸教授(ものづくりイノベーション研究副所長)、高杉隆幸特認教授らは高温での強度・耐摩耗性に優れた新素材として「Ni基の超々合金」を開発、ボルト・ナット等の締結部材や耐熱工具等を主な用途として事業化へ向け研究を進めている。
開発した新素材はニッケルをベースにアルミニウム、バナジウムを主成分とした金属間化合物。
ニッケルをベースとした金属間化合物は耐熱性や強度特性には優れるが、延性・靱(ジン)性が乏しく、十分な硬さを得ることができず耐摩耗性材料には適していないとされていた。
金野教授らの研究グループはニッケル基金属間化合物のうち延性を有するものと他の硬質金属間化合物を共存させることで、世界で初めて二重複層組織より成るニッケル基超々合金を開発した。
従来の超硬合金として広く知られているWC-Co(タングステンカーバイド・コバルト)超硬合金、中低温域では優れた耐摩耗性を有しているが、高温になると結合材に使用される金属層が軟化し耐摩耗性が低下する難点があった。現在、耐摩耗性を有する材料としては他にも工具鋼等が用いられているが、これらの素材は600℃前後から特性の低下が著しい。
これに対し新素材は、温度上昇に伴う硬さの低下が小さく、耐蝕性や耐酸化性にも優れている。
そのため現在の材料では性能や寿命が不十分な分野への応用が期待されており、数年前には大阪市のメーカーと共同でボルト・ナットを試作、また現在は堺市のメーカーと高温工具(ダイス)の開発を進めている。
最近の研究例としては、開発したニッケル基超々合金を超硬合金の結合剤として使用することで広い温度域で優れた硬さ・耐摩耗性を有する複合材「ハイブリッド合金」の開発や、溶射技術等により新素材が必要な箇所への付与を可能にする表面改質の開発も進めている。また企業と共同で素材製造法、二次加工法の確立を目指している。
本件の問合せ=電話072-254-9128、E-Mail:
ipbc@iao.osakafu-u.ac.jp(大阪府立大学地域連携研究機構・URAセンター)
【以上、金属産業新聞2015/11/23、30日合併号より引用】
【技術概要参考資料:
http://xtw.me/XldBKI5、
http://xtw.me/XtNvjaG】
9.がん細胞を伝達物質で効果的に死滅:11月
体内で細胞間のタンパク質輸送などを担う情報伝達物質「エクソソーム」に抗がん剤を入れ、がん細胞に大量に送り込んで効果的に死滅させることに、大阪府立大や武庫川女子大のチームが24日までに体外での実験に成功した。
チームの中瀬生彦特別講師(生物物理化学)は、「がん細胞だけに届くように工夫し、治療法の開発につなげたい」と話しており、近く動物実験をする計画という。
チームによると、エクソソームは脂質の膜などでできている風船状の物質。ほぼすべての細胞が情報伝達のために分泌しており、血液や唾液に多く含まれる。大きさは100ナノメートル程度。薬物などを細胞内に送り込む手段として注目されるが、いかに効率よく細胞内に送り込ませ、薬を放出させるかが課題となっている。チームはエクソソームにプラスの電荷を帯びた人工の脂質などを加え、マイナスの電荷を帯びている細胞膜に取り込まれやすいよう加工した。
その上で、培養皿上のがん細胞にエクソソームを加えると、加工しなかった場合に比べ、取り込まれる量が最大で約40倍上昇。約65%のがん細胞が死滅した。成果は英科学誌電子版に掲載された。
【以上、日本経済新聞夕刊より引用:2015/11/24】